電撃PSより野村氏インタビューです。インタビュータイトルは「SQUARE-ENIX NEW TITLES REPORT」と題され、スクエニ主力のFF・KH、2タイトルにおける展開を、野村氏へのインタビューで、その世界の片鱗を語ってもらうというもの。インタビューより「ACCとACは別の作品として、どちらも楽しんでほしい」、「BCFF7コンプリートはありえなくはない」、「FF13の3Dキャラモデルは、外部に発注したら不可能な作り方」などを話されています。また「KH」については「KHコーデッドは”アバターキングダム”とのリンクがある」、「KHBbSの台本は”FF”クラス」、「KH358/2Daysは、シオンの存在とロクサスの成長過程がみどころ」、「ミッションモードの隠しキャラは、ドナルド・グーフィーの他にも何人か存在する」、「クリア後のイラストを自分で描き下ろした」、「KHの3タイトルが出そろったら、そろそろソラの出番」など。[詳細は以下]
※電撃PSの記事を抜粋しています。画像や記事詳細は書店にて雑誌をお求めください。
「SQUARE-ENIX NEW TITLES REPORT」
「コンピレーション オブ FFVII」の今後の展開
—「FF7ACC」が発売されて、1ヶ月以上が経ちましたが、ユーザーさんの反応はいかがですか?
野村氏:こちらの制作意図に合う意見が多く返ってきましたね。「FF7ACC」はとにかくわかりやすい内容にするというコンセプトだったので、ユーザーさんから「物語の流れがわかりやすかった」などの反応が多くてよかったと思っています。「”FF7AC”のほうがテンポがよかった」という声もありましたが、コンセプトの都合上、いたしかたないご意見だと思っています。まったく同じ作品を作っても意味はないので、別作品としてどちらも観て楽しんでいただければ、ありがたいです。
—今後の「コンピレーション オブ FF7」としての展開はいかがでしょう?例えば携帯電話用「BCFF7」が携帯でゲーム機で遊べるなど。
野村氏:つまり、「ビフォアクライシス FF7 コンプリート」ですか(笑)。あの作品もリリースからだいぶ経ちますからね。ありえなくはないと思います。でもまずは発表ずみのタイトルを仕上げなければなりません。
—「FF7 インターナショナル」のゲームアーカイブス化もありましたが、さらにこの先の展開は?
野村氏:少なくともコンピレーション関連については、しばらく動きはないと思いますが、ゲームアーカイブスのほうは北瀬しだいで、今回の「FF7 インターナショナル」のゲームアーカイブス化も北瀬の希望で実現したもので、今後も何か発表はあるかもしれませんね。
「The 3rd Birthday」は可能性を秘めた作品
—「FFXIII」の体験版を見て、キャラクターの作り込みがハンパではなくて驚きましたが、その作業はかなり大変そうですね?
野村氏:ユーザーのみなさんが感じるようなキャラの魅力というのは、制作段階における細かなチェックや各セクションの連携があってのことです、自分はキャラクターをデザインしたあとも、モデリング作業を細かくチェックし、よく修正指示を出します。キャラクターの完成形は3Dモデルの状態ですので、デザインが終わっても、3Dモデルとして完成させる”落とし込み”をしていくかかわりは重要なんです。おそらく外部のデザイナーさんに発注したら、まず不可能な作り方をしています。
—ちなみに、「FFXIII」における野村さんの作業というのはまだあるのですか?
野村氏:キャラクターデザインはもう終わりましたので、現在はボイスの収録の立会や宣伝用の作業関係だけですね。現在自分は「FFアギト13」や「FFヴェルサス13」に注力しているところです。
—では、「FFアギト13」の開発状況は?
野村氏:「FFXIII」の体験版や、以前イベントなどで公開した映像にバトルシーンが映っていたと思いますが、現在は違う形になっています。PSPという携帯ゲームの作品とはいえ、「FF」のナンバリングタイトルの一端を担うわけですから、「その時代の最高峰の作品」を目指して制作しています。
—同じPSPで登場予定の「The 3rd Birthday」の状況はいかがでしょう?
野村氏:先日、ゲーム序盤をちょっと遊べるテスト版が上がってきました。あくまで触りをプレイできる程度のものですが、どんなゲームになるかを感じることができるものでした。もちろんまだ制作途中のものなので、ここからさらに詰めていきますが、社内でも想像力のある人が触れば、完成形が楽しみになる仕上がりになっていました。「The 3rd Birthday」はすごい作品に仕上げますので、期待してください。
観る人の度肝を抜く 「FFヴェルサス13」
—野村さんが現在メインで手掛けている「FFヴェルサス13」の現状はいかがですか?
野村氏:ゲームの作り込みにおいては、「FFXIII」に負けていられませんからね。「FFヴェルサス13」を手掛けるメインスタッフについては、ぜひ発表になっているメンバーと「FFVII」の当時のメインスタッフを見比べてほしいのですが、あのころから一緒に作品を作っているメインスタッフが多いんです。息の合ったチームで、1人1人がこだわりを持っていますので、クオリティも自然と上がっていきます。自分がチェックする前段階から各自が厳しいチェックを行っているので、自分のところに来た時点で、ほとんどの問題はクリアされているんです。自分が指摘するであろうポイントは、各スタッフが大方把握しているので、言われる前につぶすというスタンスで進めてくれていますね。
—現在は具体的にどのような制作状況なのでしょう?
野村氏:バトルやマップギミックなどのテストを繰り返しています。先日ライト(照明)のテストで昼と夜の街並みを確認したのですが、現実の街が目の前にあるようで、いい感じにできていました。キャラを放置したときのアクションも徐々に出来上がってきています。本当ならお見せしたいくらいなのですが、「FFヴェルサス13」の情報はしばらくお待ちください。ある程度の段階で、また驚くものを、お披露目できるようにしますので。制作自体は順調に進んでいます。
—この先、新たな発表が行われるのは、どのタイミングになりますか?
野村氏:まずは6月にアメリカで行われるE3で、「FFXIII」の最新映像が公開されます。ほかのタイトルの情報については、もうしばらくお待ちください。今は発表ずみで発売が近いタイトルから順に1つずづ着実に、制作しているところですので。
「KH358/2Days」が終わってひと息?
—3タイトルが展開中の「KH」シリーズですが、まずは携帯電話用「KHコーデッド」の開発状況を教えてください。
野村氏:お待たせしましたが、いよいよみなさんにお届けできます。「KH358/2Days」の発売日から間を置かずに配信予定ですので、ぜひプレイしてください。
—エピソードはどれくらいのボリュームに?
野村氏:現在、エピソードを作り置きしているのですが、かなりのボリュームになっています。時間軸上、描かれる期間としては短い物語なのですが、内容はかなり濃いものに仕上がっています。
—具体的には、どのような点が濃いのでしょう?
野村氏:ストーリー面というよりはゲーム部分のほうですね。簡単にすぐ終わるのではと思ってプレイすると、なかなかに頭を使ううえ、ゲームの長さもけっこうあって苦戦すると思いますよ。ほかの2作品に負けず劣らず、作り込みはかなりのものになっています。できあがってきたものを見て、スタッフの熱意が感じられましたから。自分としては、当初はもっと手軽に遊べるゲームを考えていたのですが、スタッフはかなり本気で作り込んでいます。ほかの2タイトルの出来のよさもあり、スタッフ陣は気合を入れて制作していますよ。
—そもそもの「KHコーデッド」の制作経緯は?
野村氏:ディズニーさんからの提案です。「KH358/2Days」と「KHBbS」は早い時期に制作が確定していたのですが、それらよりも気軽に遊べる「KH」を携帯電話で出してほしいという要望があったので、構想を温めていた「KHCoded」をチョイスしました。携帯電話ではパーティメンバーを付き添わせるほどのスペックはありませんでしたし、ストーリーも長編ではないほうがよかったので、エピソードの位置づけ的にも「KHコーデッド」が適切ではないかと考えました。
—配信前に教えていただける秘密などがありましたら、ぜひ教えてください。
野村氏:具体的にはまだ言えませんが、「アバターキングダム」とのリンクを予定しています。「アバターキングダム」で多くの買い物をしているユーザーさんは、「KHコーデッド」を始めたときにちょっとオトクなことがあるとか。「KHコーデッド」は、シリーズをプレイした方なら、見逃せないシーンや、今後の展開について触れているシーンもありますので、期待してください。
—次に、「KHBbS」のほうはいかがでしょうか?
野村氏:「KHBbS」は現在スケジュール的に大変な状況です。「KH358/2Days」が終わってひと息かと思ったら、今度はこちらを仕上げなければなりません。年内発売予定ですので、間に合うように全力で制作中です。現在はボイス収録を休日返上で行っています。
—PSPということで、ゲームのボリュームもかなりのものになりそうですね。
野村氏:3タイトルのなかでは一番のボリュームですね。主人公3人ぶんの物語が入っていますし、台本の厚みも「FF」クラスになっています。マップも新規ですから、遊び応えも十分かと思います。操作感やグラフィックは従来のシリーズに一番近いものになりますが、それを携帯ゲーム機で遊べるのは魅力的ですね。イベントシーンも多いので作業は大変ですが、制作は着実に進んでいますので、期待して待っていてください。
ミッションモードの協力&競争感を味わってほしい
—いよいよ発売を迎える「KH358/2Days」ですが、ゲームの見どころを教えてください。
野村氏:システム面でいえば、やはりミッションモードですね。最大4人で遊べるミッションモードというのは、本作を制作するときの根底となる部分でしたので。カスタマイズ要素であるパネルシステムは、組み合わせ方によってさまざまな遊び方ができますので、それもぜひミッションモードに生かしてください。アイテムばかり持った”お助けキャラ”といったカスタマイズを行って、ミッションに挑むのもおもしろいと思いますよ。
—ミッションモードで、味方からのダメージ判定を自由に設定できるのには驚きました。
野村氏:ランキング争いについてもそうですが、それらの「競争」部分はディズニーさんからの希望なんです。機関のメンバーは過去に敵とし登場しましたし、内部的にもフレンドリーな関係ではないので、ミッション中も競い合っているほうが構図として似合っていますし。ただし、味方からのダメージはやりすぎると痛手になるので、そこはうまくカバーしてください。とくに、範囲の広い通常攻撃を持ったキャラやリミットブレイク中のキャラはよ要注意ですよ。もちろん、強力な敵をみんなで倒しに行くという平和的な遊び方もできますので、そこはユーザーさんの遊び方次第です。協力にも競争にもなる特殊な雰囲気を、ぜひ味わってほしいですね。
—ストーリー面のみどころはどのへんでしょう?
野村氏:シオンの存在とロクサスの成長過程ですね。どちらも「KH358/2Days」のストーリーで描きたかった部分です。過去のシリーズ同様、今回もさまざまなディズニーワールドを訪れて、そのなかでロクサスは人間の持つ感情や心理を考えていきます。ゲーム開始時はぼんやりとして雰囲気ですが、物語が進むにつれて感情的な言葉をぶつけたりもします。ゲーム中ではロクサスつけた日記を読めるのですが、そこに書かれた文体なども、日を追うごとに変わっていきます。そういったロクサスの成長ぶりに注目してみてください。
—シオンについては、初登場のキャラだけに発見できる事実が多くなりそうですね。
野村氏:ファンの方の多くは「シオンはいったい誰のノーバディなのか?」という疑問を抱いているのではないかと思いますが、その答えをゲームで確かめてください。
—彼女の存在はいつから考えられていたのですか?
野村氏:イメージは「KHII」のころからすでにありました。ロクサスが機関を抜けたのは、ある人物の影響によるためであり、それは同年代の女の子によるものだろうとまでは、頭の片隅で考えていました。そこから本作の制作の中で、今の姿に仕上がっていったわけです。シオンはうまく作り込めたこともあり、お気に入りのキャラでもあります。物語をとおして彼女の変化や考えていることなどが、矛盾なくキッチリつながったと思います。その結果、ロクサスには今回も悲しい思いをさせてしまいましたが……。
—シリーズではおなじみの隠し要素は?
野村氏:ミッションモードで使用可能になる隠しキャラクターがいます。すでにドナルドとグーフィーが公開されていると思いますが、ほかにも何人か存在しています。今回もゲーム開始時に難易度が3段階から選べますが、それは純粋にプレイ難易度だけに影響しています。
—隠しレポートなどはありますか?
野村氏:ロクサスがつける日記「ロクサスダイアリー」があるのですが、これにはちょっとした仕掛けを用意しています。シリーズ経験者はとくに見逃せないですよ。
—クリア後の書き下ろしイラストは今回も?
野村氏:今回自分が書き下ろしたのは、タイトル画面とゲームクリア後の2枚のイラストのみになります。クリア時に表示されるイラストは3Dのイラストになる予定だったのですが、せっかくなので自分で描きたくて、スタッフに無理を言って急きょ描き下ろしました。
—ゲーム中にはシーソルトアイスがひんぱんに登場しますが、野村さん自身、何か思い入れがあるのですか?
野村氏:ディズニーシーに実際あるシーソルトアイスを自分が気に入っているので。実際はカップに入ったアイスなのですが、棒状になったものがあったらいいなという、ちょっとした願望も込めています(笑)。DSのゲーム立ち上げ画面にあるアイコンは、最初ロクサスの顔だったのですが、ここはシーソルトアイスでしょうと思って変更しました。
構想は「KHBbS」の先まですでに用意してある?
—「KH358/2Days」の制作をへて、DSというハードについてどのように感じましたか?
野村氏:DSで制作をしたのは「すばらしきこのせかい」と「KH358/2Days」の2作品のみですが、どちらも異なるコンセプトのもとに制作し、ある程度DSについて理解したつもりです。この2作品の経験を生かして、次はこんなゲームを作ろうと、頭のなかで構想だけはできています。ほかのタイトルの制作もあり、まだ企画書の形にもできていないのですけどね。
—「KH」シリーズの今後の構想はいかがでしょう?
野村氏:もちろん考えています。今回同時発表している3タイトルのうち、「KHBbS」は1作目よりも過去の話でありながらも、「KHII」の先を予感させるものになっています。「KHBbS」が完成し、3タイトルすべてが出そろったら、そろそろソラの出番かもしれません。「KHII」の最後に、デスティニーアイランドで王様の手紙を読んだソラがどう動くのか……。今後の展開をゆっくりとお待ちください。